フィラリアとは寄生虫の一種です。幼虫が寄生している蚊に刺されることで感染し、血液中に幼虫が入り込みます。この幼虫は脱皮しながら成長し、最終的に心臓と肺を繋ぐ血管の辺りに定着します。このときにオスとメスが揃っていると繁殖が始まり、子供を産み始めます。こうして生まれた幼虫が、また蚊に刺されたときに蚊に入り込み、その蚊がまた他の動物を刺して感染させ……という形で感染が広がっていきます。
ちなみに日本国内で問題となるのは主に犬に感染する犬糸状虫ですが、これはまれに猫にも感染することがあります。また、世界には様々な種類のフィラリアがあり、中には人間に感染するものもあります。かつては日本国内にも存在しており、1977年までは治療の記録が存在します。西郷隆盛がこれに感染していた、という話も残っています。
犬のフィラリア感染症の症状は、咳として現れます。心臓から肺に繋がる血管に寄生することでその血管が狭まり、肺に負荷がかかった結果として咳が出ると言われています。さらに病態が進行すると、肺への血流が悪くなることから血中の酸素が不足し、疲れやすくなります。またさらに悪化すると狭まった血管に血液を通そうとする心臓への負担が高まり、心不全に至ることもあります。今でこそ見ることは少なくなりましたが、この地域でもフィラリア検査陽性の犬に出会うことが無いわけではありません。また流行地域での保護犬が感染していることは多く、保護犬を譲り受ける方は十分注意してください。
また猫の咳の原因にもなり得ます。犬糸状虫は本来はイヌ科動物(国内ではイヌ・キツネ・タヌキ)に寄生するものですが、まれに猫にも感染します。この時に喘息様の症状や下痢・嘔吐といった症状を示すことがあります。
フィラリア感染症対策の最たるところは予防です。しかしながら予防と言っても感染自体を防ぐことはできません。蚊に刺されて血中に入った幼虫が成長する前に退治する。発症する前に治療する。これがフィラリアの薬の効果です。服用期間は蚊の発生1か月後から終息1か月後まで、諏訪地域では5月から11月までの7か月間が該当します。県外のもっと暖かい地域では通年蚊が見られる地域もあるでしょう。そういった場所では通年の予防が必要となります。
症状が出たあとだと、新たな感染を防ぎつつ、感染済みの成虫と血管・心臓の治療をしなければなりません。しかしながら成虫の退治というのが実に厄介です。成虫の大きさは実に10数cm~30cm弱。大きいです。これを血管内で退治してしまうと、成虫の死体で血管が詰まってしまいます。元々の容態が悪い場合はこの影響で亡くなってしまうこともあります。太い血管から専用の器具を入れて直接虫体を引きずり出す方法もありますが、この方法で100%虫を無くすことは、まず不可能です。薬を使って退治するときの副作用を減らすのが主目的となります。また、何よりの問題が、これらの薬や器具は2018年現在国内での販売、生産がなされていません。器具については小規模で開発・生産が試みられているようですが苦戦している様子です。消極的な方法として、追加の感染を抑えつつ成虫の寿命を待つ、という方法もあります。通常通りにフィラリア予防薬を飲みつつ、対症療法を施します。ただし成虫の寿命は4~5年と言われており根気が必要なのと、その間に発症・重篤化するというリスクもあります。なので結局のところ、発症してから治療するよりも、あらかじめ予防しておくほうがリスク回避の意味で優れていると考えます。
現在様々なメーカーから予防薬が出ていますが、薬の形態で3通り、性質で2通りに分けられます。
〇形態
・錠剤
・チュアブル錠、フレーバー錠
・スポットオン薬(背中に付ける液状)
〇性質
・効果がフィラリア単独
・マダニや他の寄生虫にも有効
ペットの性格や薬が得意・苦手、薬を飲ませるのが得意・苦手、費用など様々な条件があると思いますので、お気軽にご相談ください。
かつてはフィラリア感染症は、重要な犬の死亡原因の一つでした。予防薬が開発されるまでは、平均寿命は5年程度でした。心臓に負荷をかける感染症に対してノーガードだったと思うと納得の数字です。そして、この問題にストップをかけたのが現在でもフィラリア予防薬の代表成分である「イベルメクチン」です。この薬は発売当初は家畜向けの薬でしたがフィラリア感染症の予防効果が認められ、犬用の薬としての産声をあげました。この薬によって犬の平均寿命は10年延びたと言われています。そして、この薬が発売されたのは1993年のことです。ほんの25年前、平成に入ってからの出来事です。
そしてこの薬の開発のきっかけとなったのが、実は日本人科学者の発見です。2015年のノーベル生理学・医学賞受賞者、大村智先生を覚えているでしょうか? この方がイベルメクチンの原型であるアベルメクチンという物質を発見し、寄生虫への効果を見出してくれたがために、現在では20歳を超えてなお元気な犬にも出会えるのです。また人間に感染するフィラリアやその他の寄生虫症に対しても使用されており、アフリカや東南アジア、日本国内においてもこの薬で健康体を取り戻した方は多くいたようです。
フィラリアは、適切に薬を飲んでいれば100%予防できるものです。その薬も日本人が見つけたと思うと、何か嬉しさや誇らしさを感じませんか?
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