A・動物種によって違いますが、身近な犬や猫は基本的に前足5本、後ろ足4本です。馬なら中指1本、牛やヤギ、ヒツジは中指薬指の2本、豚は親指を除いた4本です。では歩くときはどこを地面についているでしょう?
上で挙げた馬や牛など、ひづめを持つ動物は本当に指先で歩いています。前回のコラムで取り上げたアライグマは掌全体を付けて歩くので、人の手形のような足跡を残します。では犬や猫はどうかと言うと、指だけで歩いています。背伸びをしたときに地面についている部分と同じですね。前足も同様なので、人差し指から小指までをテーブルに付けて手を反らしてみましょう。親指が浮きますね? その状態です。
ここからが本題。指には爪が生えています。爪は日々伸びながら、同時に生活の中で削れながら在り続け、削れるほうが少ないと爪が伸びてきます。飼い方によっては全く爪を切ったことが無い方もいるでしょう。以前爪がとても伸びたと相談を受けたことがありましたが話を聞くとどうやら猟犬で、猟期に入って野山を駆け回っていたらいつの間にか長さが整っていたそうです。外飼いの子は短く維持できている子が多い一方で、内飼いでお散歩も少なめの子はお手入れが必要なことが多いですね。
ただ、いくら歩き回っていても削れにくい指があります。それが前足の親指です。上に書いた通り、親指は基本的に地面から浮いているので、普通に歩いているだけだとなかなか削れません。つまり、他の指より爪が伸びやすいということです。他の指は比較的目立ちますし伸び辛いのですが、ここだけは、特に猫の場合目立たないのでいつの間にか伸びていることもあります。爪切りが苦手な子でも、親指だけはチェックしておきましょう。
爪の長さでギネスに挑戦してたりする人を見たことがあるでしょうか? 爪はまっすぐ指の延長線に伸びていくわけではなく、指の腹側に向かってくるくるとらせんを描いて巻かれていきます。同じことが犬や猫で起きるとどうなるかと言うと、
こうなります。わかるでしょうか? これは左前足なんですが、見えている爪は親指(左側)と人差し指(右側)です。人差し指の爪に赤黒いものが隣接しているのがわかると思います。肉球に完全に刺さっています。この子は実家に預けてある猫なんですがそれこそ爪を切らせてくれず、上を歩かれると鋭く痛いので「ちゃんと研げてるみたいだしいいかー」と思ってチェックを怠っていました。まさに医者の不養生です。そんな中、伯母に預かってもらうタイミングがあり、その時に血が出ているということで発覚しました。
写っているのは人差し指だけですが、親指も同様に刺さっており、よく見ると歩くときに足をかばう様子もありました。親指の爪が刺さってしまった子は時折見ますが、ちょっと人差し指は珍しいですね。おそらく親指が刺さったのが痛くて歩くときに少し傾くようになり、人差し指の接地が弱くなった結果削れる量が減ってしまいこうなったのではないかと思われます。本人の抗議の声には耳を貸さずに問答無用で爪を切り、刺さってる部分を取り除いて消毒。念のため抗生剤も処方。気にして舐めようとするのでエリザベスカラー装着。ふてくされた目で睨まれましたが歩く様子は問題なくなり、たっぷり撫でてごまかしておきました。ちなみにもう一人の子は比較的おとなしく切らせてくれるのですが、この時は歩くだけで布地に爪が引っかかるレベルだったのでこちらも慌てて切りました。
そしてこちらが切った爪です。先端の赤くなっている部分が刺さっていました。長さにして数ミリ、爪の太さと同じくらいの長さが食い込んでいたことになります。
我が家の猫の話に終始してしまいましたが、犬でも同様のことは起こります。去年診察した子の中にはやはり親指の爪が伸びすぎてしまい肉球に刺さり、貫通してなお伸び続けて2週近く巻いていた犬もいました。犬の場合はなにやらバネのように重ならずに伸びる傾向があるようですし、また先端が尖ってないので刺さりづらいとは思いますが、やはり気を付けてください。
また、爪の伸びすぎによる弊害は他にもあります。単純に、伸びすぎた爪は折れやすくなります。短ければ折れないという話でもないのですが、爪をケガする子の大半は爪が伸びすぎています。そして飼い主側の弊害として、長い爪はフローリングに当たってカチャカチャと音がするのが気になりますよね。引っかかって痛かったり、家具や布が傷ついてしまうこともありますね。爪のお手入れ、できますか? ご自分で爪を切るでもいいですし、動物病院やトリミングサロンで切ってもらってもいいでしょう。爪の色が濃くて深爪が心配なときは、ペンライトがあれば当ててみましょう。真っ黒な爪でない限りは血管が通ってる部分が赤く見えるので、そこまで行かないように切れば大丈夫です。
たかが爪、されど爪。巻き爪で悩まれている方はよくわかると思います。足先の傷みというのはとにかく気になるものです。人間だけでなく、犬も猫も、牛や馬だってそうです。牛のヒヅメもちゃんと手入れしないと伸びすぎてバランスが悪くなり関節を痛めたり、爪にばい菌が入って痛み出し、そのストレスで乳量が減ってしまうこともあります。「削蹄」というワードで動画を探すと職人芸を見れますよ。
2019年1月20日
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